人     間

ルシファー 人は、肉を喰らい。快楽を貪る。己の欲望や快楽のために諍いを起こし、憎み争う。そのために、いつだって、犠牲になるのは、弱い動物たちだ。戦争が、起こるたびに、山河は、焼かれ、多くの動物たちの住処や命が、失われる。それでも、ただひたすらに、黙って、堪え忍ばねばならないのか。
 我々は、神を信じ、ひたすらに、耐えてきたのだ。しかし、神は人間の味方だけをして我々の味方は、してはくれなかった。
 そうしている間にも多くの子供達が、俺達の方に救いを求め、手を差し伸ばしながら死んでいった。そのたびに、我々は、血の涙を流し続けたのだ。
 それでも、この儂に神を信じろと言うのか。

 そういうとルシファーは、ボロボロと大粒の涙を流した。

聖霊 神を憎み、呪う事によって、汝は、救われるのか。
 神の御国は、心の中にこそある。楽園とは、心の安寧の中にこそある。おまえの内なる世界の静寂、静謐にこそある。人を憎み、呪ったところで心の安寧は得られない。
 神を信じなければ救いはえられない。そして、救いは、心の気高さと純粋さにしかない。

ルシファー 自然に生きる物たちは、神の掟を守り、慎ましく生きてきた。しかし、人間は、自分の快楽のためだけに生き物を狩る。こんな事は、どんな獰猛な獣だってやりはしない。自分に必要な物しか獲物にしたりはしない。だのに、多くの生き物は、人間の快楽の生け贄になって滅亡していった。その滅び去った物どもの怨念が、恨みに、恨んで物の怪に、姿を、変えたとしてもおかしくはあるまい。
 だから、儂は、あえて神に背き。人間を呪ってやるのだ。
 人は、この俺たちを残虐、非情という。しかし、そうさせたのは、誰だ。人間達ではないか。
 俺達に、とってこの世は、暗い、漆黒の闇の中にある。憎しみと苦しみしかない。このような世を、作り出した神をどうして、信じろと言うのか。

聖霊 それで、逝く者、滅び去る者に、救いはあると思うか。
 復讐だけに生きるおまえを見て、滅び去っていった者が、喜ぶと思うか。
 救いは、内面の安寧にしかない。そこにこそ神の国がある。救いは、汝の心の内にしかない。神を信じ、神の国を、求めないかぎり、救いはない。
 その暗闇は、汝の心の暗闇だ。

ルシファー 儂の仲間には、禁欲をしている者もいる。奴は、欲望と知恵は、神が、与えたもうた最も邪悪な贈り物だと言う。
 奴は肉は食わぬ。なるべく、命ある物は口にせぬようにしている。生きるために、必要な物を、極少量しか食べぬ。だからといって、何も摂らずに、死んでいけば、神の思うつぼだと、奴は、呻くように言う。
 生きるのも苦しい。死ぬのも苦しい。
 奴は、歩く時も命ある物を、踏みつけぬように、おそるおそる歩く。しかし、非道な人間に対しては、情け容赦をしない。人の目につかぬように、暗闇に棲み。人が、寝静まったのを、見計らって動き出す。そして、人に見つかると、身を守るために襲いかかる。恐怖は、奴を、残虐にする。
 それを見て、人は、奴を、怖れ、魔王だと怖れおののく。そんな風に奴を変えてしまったのは誰だ。人間ではないか。

聖霊 信じるままに、生きるが、よい。
 正しいと信じることに従って生き、たとえ、その身は滅ぼそうとも、神の栄光は、その者に与えられるであろう。
 我々は、ともに戦わなければならない。神の御国が現れるまで。
 悪魔や悪霊を生み出したのは、人間の心である。
 その前に、問われなければならないのは、人間の行いである。
 人間が、自分の行いを改めなければ、神が、人間を滅ぼすであろう。

ルシファー かつてこの世は、神の栄光に満たされていた。地上には、生き物が満ち満ちており、海や川には魚たちが活き活きと泳いでいた。空は、鳥たちが我が物顔に飛び回り、水は清く澄んでいた。人間が現れるまでは、この星は、楽園そのものだった。 

聖霊 人間は、都合が悪くなると、神や悪魔の性にする。しかし、それは、人間が犯した罪だ。神の性でもなく、悪魔の性でもない。だから、その報いは、人間が、受けなければならないのだ。
 人が、神を怖れなくなった時、神は、汝ら、以上に非情になる。神は、荒ぶる神でもあるのだ。憤怒の形相となり、怒れる神となる。

 もし、人が、悪魔を怖れるのなら、悪魔を去らせたいのなら、人は、自分を正さなければならない。

 人間が、全てではありません。神が、全てなのです。
 
ルシファー 人間が自分の責任で滅びるのは、勝手だ。しかし、その巻き添いを食わされる方はたまったものではない。

聖霊 万物は、流転する。諸行無常。それが、神の定め。たとえ、人が、その物を滅ぼさずとも、いつか、滅びはくるのです。それが摂理です。ただ、大切なのは、それを、どう受け止め。どう生きるかです。




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