その方は、私の方を見ると、おもむろに、口を開き、我々に、話しかけた。

 とは、すべての、存在の、前提となるもの。
 存在を、存在たらしめる存在。あなたを、あなたたらしめ、私を、私たらしめるもの。
 故に、このような存在は、神しかなく、この世に、神は、ただ一つしか存在しない。
 神は、唯一無二にして、絶対的、普遍的なるもの。
 神は、自己の存在の根本原因である。
 このような神は、分かつことが、できない無分別な存在であり、直感的にしか、認識することはできない。


 神とは、わかりやすく言えば、
 私が、私であるために
 あなたが、あなたであるために
 山が、山であるために
 川が、川であるために
 空が、空であるために
 海が、海であるために
 花が、花であるために

 そうその方が、言い終えた時、一羽の小鳥が飛んできて、あの方の指先に留まり、チィチィとかわいらしい声でさえずり始めた。その小鳥を見ながら、あの方は、

 小鳥が、小鳥であるために、神はおられるのです。

 と微笑まれた。

 あどけない表情をした少年が

 神様って、本当にいるの

 とポツリと聞いた。

 その言葉を聞くとその方は、満面に笑みを浮かべ

 神様ほど、確かな存在は、ないのだよ。なぜなら、神様は、この世のすべての存在だから。目の前に見えているすべてが神の一部なんだ。
 ただ、人は、自分が見たり、感じたりする事のできるものに、限りがあるのだ。その全体、全てを一時(いちどき)に見ることはできない。だから、私たちは、直感でしか神様を捉えることは、できないんだ。
 と答えられた。

 神は、本当に存在するのか。

 その方は、フッとため息をつくと、次のように、ポツリとつぶやかれた。

 あなたが、そこに存在することで、すでに神の存在は、明らかなのです。あなたの存在は、神の存在の証です。

 神は、いつもあなたのそばに居られる。
 
あなたと伴に居られる。
 あなたが、暗闇に一人取り残された時。
 あなたが、道に迷い途方にくれた時。
 あなたが、皆から見放され絶望に打ちひしがれた時。
 崖淵に、たたされた時。
 大切なものを失い、大切な人と別れた時。
 重大な失敗を犯し、自信をなくしかけた時。
 神はいつも、そばにいて下さる。神は、いつも伴に居られる。

 人は死ぬ。
 しかし、突き詰めてみると、それも、定かではない。
 人はどこから来て、どこへ行くのか誰にもわからない。
 ただ、確かなのは、今、生きているという事実だ。
 そして、生きると言うことの本源こそ、神に、由来する。
 だからこそ、今、生きているという事実が、神の証なのです

 一人のかわいらしい少女が立ち上がると。その方の目をまっすぐ見ながら、おびえたような仕草で、

 私は、この世は、善と悪と、神と悪魔の戦いだと教わりました。悪魔というのは、妖怪のように恐ろしいものだと、何度も言われ、それ以来、夜や闇が恐ろしくてたまりません。

 その方は、その少女をいとおしそうに眺めると

 あなた方の多くが信じている神は、聖霊にすぎない。
 なぜなら、神の実相は、この世のすべてであり、我々は、その全体像を知ることも、表すこともできないからだ。
 人は、自らに、都合の良いように、神を描き、それを神とする。しかし、神と我々の思いとは、無縁なものである。神は、人のためにのみあるのではない。

 神は、善と悪とを超越したもの。
 
神に善悪なくば、善神、悪神もない。況や、神と対立する悪魔などありようがない。
 被創造物であるこの世のすべて物は、その創造主である神と対立することは、自分自身と対立することである。それは自己矛盾であり、愚かなことである。
 また、神は、この世のすべてを越えたもの。神は、悪鬼羅刹、怨霊、亡霊の類を、その存在も含めて肯定も否定もしていない。

 悪魔と聖霊(神)とを分かつのは、神ではない。自らの心だ。
 神は、善と悪とを超越した存在である。故に、神は、聖霊と悪魔とを分けることはしない。何を聖霊とし、何を悪魔とするかは、その人、その人の都合によるのです。同じものでも、見る人によって、それは、聖霊(神)にもなり、悪魔にもなる。しかし、それは、神の側の問題ではなく、見る人の問題なのである。

 悪魔とは、自己の内にあって自己を破滅させるものです。
 なぜ、幸せな家庭を持ちながら、それを破滅させるような行動をとるのでしょう。そのような破滅的な行動をさせるような、内面の衝動こそ、悪魔のささやきなのです。
 しかし、そのような内面の衝動は、自らの心がなさせることであり、神とは、無縁のことです。悪いとしたら、あなた自身であり、だから、その報いは、あなた自身が受けるのです。
 神の裁きによるのではありません。

 そして、その方は、笑いながら、

 ある意味で、動物や自然界から見れば、人は、最も悪魔的な存在なのである。

 神は、あなたの心を映す鏡、あなたの心が鬼のようならば、神の姿も鬼のようなものになります。悪魔を怖れる前に、自分の心を怖れることです。

 といわれた。

 一人の学生が立ち上がると、その方にこう質問した。

 神は、なぜ、唯一の存在なのですか。

 それを聞かれるとその方は、即座にきっぱりと答えられた。

 神は分かちがたく、絶対な存在です。
 
比較したり、否定することができる存在は、神ではありません。この様に比較することも、否定する事もできない存在は、神以外にはありません。故に、神は、唯一の存在なのです。

 あなたが、この広い世界でたった一人のように、神も唯一の存在なのです。
 あなたが、たた一人しかいないから、神も唯一の存在なのです





                 


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